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​月例会と夏期セミナー

久留米大学病院 総合診療棟 4F 共同カンファレンス室にて毎月1回第3日曜日(※変動する場合があります)に月例会を行っております。所属される先生方との症例報告と古典研究を中心に学術と資質の向上を図ります

(​現在は毎月一回オンラインでセミナーを行っています。)

8月には毎年夏期セミナー(旧名:夏期大学)を開催し、様々な分野の特別講師からの講義やシンポジウム、症例発表などを行い共に専門家としての学術を研鑚しております。同時に学会誌「氣血の探究」を発刊し年間の成果としております。

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月例会報告(敬称略)

     

      令和6年度 オンライン月例会          

     

                 令和6年04月18日  (症例報告 )鍼灸治療 和亀 佐々木将人

                       「遅発性ジスキネジアに対する鍼灸治療」 

                 うつ病治療時長期服薬による副作用が原因と思われる不随意運動・疼痛・歩行障害

                 に対する治療の報告だった。治療前と治療後の動き方を動画で記録されていたので、

                 変化が明確にわかりやすかった。患者の一番の希望である疼痛の消失に対してはなかなか

                 結果として現れていないが、不随意運動の軽減は他の疾患で通院されている病院のスタッフ

                 からも変化を認められるほどの改善がある。経絡色体治療、頭鍼治療を中心に、治療方針

                 をしっかりと守って施術に当たられた経過が報告からも感じられた。

                 痛みに関してはその感受性の違いや本人が感じるものを施術者がどのように受け止めるかは

                 永遠の課題のように思われる。「患者が痛いというなら痛みは存在する。」を基本に

                 痛みを0にするというよりはできるだけ0に近づけることが大事である。

                 現代医学での痛みの捉え方と東洋医学での痛みの捉え方は真逆であり、現代医学は痛みの

                 信号を”止める”のに対して東洋医学は痛みそのものというよりその痛みの原因をみつけ、

                 ”止める”のではなく”流す”ものである。との意見も伺った。まさにそこに東洋医学の真髄が

​                 詰まっているのではないかと思う。患者の期待する症状の改善が見られない場合、自分の

                 治療方針に疑いを持つ場合もあるが、あえてそこを変えることなく治療に当たっていることも

​                 よかったのではないかと思われる症例であった。

                 

                令和6年05月15日  (症例報告 )山崎針療院 山崎 浩一郎

                       「高血圧に対する太極治療」 

                 「自然良病力の要は肝・脾・腎・三焦にあり」(鍼灸治療基礎学:代田文誌)

                 本態性高血圧の改善例の紹介

                 降圧剤を服用するも様々なストレスから血圧が上昇し、体調もすぐなかった患者が

                 4回の治療でほぼ安定した。

                 高血圧に伴う頭痛も改善が見られた

                 沢田流太極治療で主に五臓兪を軸とした下部兪穴を中心に原穴を使用し、脊椎の棘突起

                 直側を診断点としている。

                 老子 第76章 「柔弱は生の徒」とある。

                 緊張により凝り固まった筋肉、筋膜、皮膚が柔らかく変化することを目標に治療を行う。

                 結果少ない回数で改善をみた。素晴らしい症例であった。

                 

                 (医療情報) 田山鍼灸院 山田 文

                 「高血圧の判定基準が2024年4月ついに改訂!

                 副作用もある降圧剤を飲むべきか否か 問題に迫る 大櫛陽一

                 記事の紹介

                 高血圧に対する医療介入は収縮期160/拡張期100mmHg以上となった。

                 その理由としては

                 ①国際的な潮流

                 ②日本人を対象とする研究の結果

                 ③国民医療費の限界

                 こんなにも大幅に基準値が変わる不思議について議論した。

                 一方で山崎先生の紹介の新聞記事によると細かく分析すると、血圧は低ければ低いほど

                 脳血管障害リスクは減るとの報告もあり、人間の身体をどちらの方向から見るかで

                 基準値は変わる

                 基準値神話に振り回されないように冷静に対処することが必要と感じた。

                 

         令和6年6月20日  (症例報告 )東西医学 北野はりきゅう院 北野 謙市

                       「近年、患者の身体に原因不明の変化? ~免疫系の異常?」 

                 新型コロナウィルス罹患後と新型コロナワクチン接種後に起きた原因不明の体調不良になった

                 3症例を比較検討した。考察はなく会員皆で何が起きているのか?鍼灸師としてどのように

                 対処すべきか?などを検討しあった。

                 1症例目の患者については内視鏡の手術後の手術痕に対する電気温灸器による

                 灸治療での痛みの改善が見られたとのことだった。

                 

                 手術後の傷跡の痛みについては、たまたまタイミングよく安徳信二先生のご自身の

                 術後の施灸の症例として透熱灸を10か所程度、10日間ほど試した結果、最初の数日

                 以降は痛み止めの服用は必要ないほど痛みが引いたとの、

                 それこそ生の貴重な情報をいただいた。

                 新型コロナについては、正確な情報が得られにくなか、私たち鍼灸師が答えを出すもの

                 でもないし、出せるものでもない。今の医療界でも詳細なデータを集積し、利害関係なく

                 分析しなければ、真の結末は誰にも判らないであろう。

                 このような状況の中で私たち鍼灸師としてできることは最大のメリットは症状さえあれば、

                 病名がわからなくても対応できることではないか?患者さんのバックグランドも含め、長時間

                 患者さんの皮膚を通して教えてもらう数々の情報を元にまさに総合診療を行っている、

                 わたしたちの持ち味を生かしつつ、患者さんの体調が少しでも改善することに尽力するしか

                 ないのだと改めて決意させられた症例であった

                下川会長より

                5月の全日本鍼灸学会の開催地が仙台であったが、伊達政宗の病歴のエピソードを

                紹介いただいた。

                

                                       

         令和6年7月10日  (症例報告 )田山鍼灸院 山田 喜平

                       「腰痛の一症例」 

                 原因が特定できない腰痛と診断された症例

                 『腰痛診療ガイドライン2012』初版 では”非特異性腰痛が腰痛の85%を占めると

                 記載されているが、その原著lでは機械製腰痛には腰椎捻挫70%、椎間板・椎間関節

                 の加齢変化10%などを示して、おそらく85%程度は病理解剖学的診断を正確に行う

                 ことが困難と記載された。

                 一方、近年発表された整形外科専門医による腰痛の原因を詳細に調査した報告によれば、

                 腰痛の原因の内訳は、椎間関節性 22%、筋・筋膜性 18%、 椎間板性 13%

                 狭窄型 11% 椎間板ヘルニア 7%、仙腸関節性 6% などである。

                 75%以上で診断が可能であり、診断不明の”非特異型腰痛”は、22%にすぎなかったとある。

                 この報告の真偽についても熟考の余地はあるが、いずれにせよ「腰痛の85%が非特異的腰痛

                 である」という根拠は再考する必要がある。

                 東洋医学的にも、鑑別診断はできるが、本症例の患者は本人は完治したと思っているが、

                 40年前に発症したうつ病により服薬を長期にわたり続けており、体調に応じて薬が増えて

                 10年前には副作用が強く出すぎて、親族のすすめで東京の専門病院で薬を辞めるために

                 入院されており、その時大変な思いをしたとのことであった。

                 今回の腰痛は二週間前に発症され、病院のMRI検査で異常なしと診断され、病院から整体、

                 やヨガ、ピラティスなどを薦められたので、整体施術を受けたところ、術後よかったが長距離を

                 徒歩で帰ってから悪化し動けなくなったとのことであった。

                 心因性を疑われるような所見も所々に見られたため、精神的な不安感や問題の本質を見極める

                 必要があり、東洋医学的にもそちらも同時に診ていった。

                 しかし3診目のあと、本人の希望でストレスケア病棟のある病院へ入院された。

                 80歳という高齢の一人暮らしのなかで話し相手がいないということで、治療というよりお話が先で

                 とにかく自分の話を聞いてほしいという気持ちが強かったように思う。

                 日本は清潔、綺麗になりすぎてしまい、かつてあったような雑多な中で近所や知り合いの方が

                 気軽に屋外で囲碁、将棋をしたり、井戸端会議をしたり、夕涼みしたりといった人と人との

                 ラフな付き合いがなくなったことで、孤独になる人がいるのではないかと思う。

 

                 (医療情報) 普洱茶(プーアール茶)のすすめ        山田 喜平

                 プーアール茶の歴史から現在の扱いなど詳細に報告いただいた。

                 お茶は元来”薬”として貴重なものであり、「養生の仙薬、延命の妙術」と言われてきた。

                 『黄帝内経・素問 四気調神論編』によれば

                 「夏は早く起き、嫌わず、怒らず、氣を排泄すべし。逆を成せば心傷つき秋を経て、冬には重病

                  となろう」

                 「夏に冷たいものを取る人は体内に熱が蓄積しやすく、火照りやすいので、食後に温かく

                  茶氣に富んだお茶を飲んで、暑気を発散させるとよいでしょう」

                 とあります。

                 お茶をゆっくりした環境のなかで、味わい深くいただく時間は何よりも贅沢なひと時かも

​                 しれません。 できれば氣の置けない人たちとの会話が主役ですが。

                

               次回は9月11日(水) 20時スタート

          オンライン月例会になります。

        

           症例報告は山田竹弘の担当です。

              ご興味のある方は事前に事務局へ連絡ください。

    

                 

     

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