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​月例会と夏期セミナー

久留米大学病院 総合診療棟 4F 共同カンファレンス室にて毎月1回第3日曜日(※変動する場合があります)に月例会を行っております。所属される先生方との症例報告と古典研究を中心に学術と資質の向上を図ります

(​現在は毎月一回オンラインでセミナーを行っています。)

8月には毎年夏期セミナー(旧名:夏期大学)を開催し、様々な分野の特別講師からの講義やシンポジウム、症例発表などを行い共に専門家としての学術を研鑚しております。同時に学会誌「氣血の探究」を発刊し年間の成果としております。

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月例会報告(敬称略)

     

      令和5年度 オンライン月例会          

     

                 令和5年04月19日  (症例報告 ) 田山鍼灸院 山田 竹弘 「急性腰痛の症例」 

                 数年前に経験した自身の症例の紹介だった。

                 自分自身が鍼灸師の場合もちろん自身で治療もできるが、制限がある。特に痛みがある場合

                 痛みの発現部位への治療が困難な場合もあるが、そこは遠隔治療を使うこともできる。

                 家族に鍼灸師がいる場合は家族に治療してもらうこともある。

                 この症例は家族に鍼灸師があり、反応を見ながら様々な治療を試していき、どのような経過を

                 たどりながら改善していったかを報告された。

                 痛みがありながらどうしても仕事などで無理をせざるを得ない場合、どのように治療を継続して

                 いくか?痛みの状態に合わせて、どういった施術が一番適応するかなど興味深い症例

​                 であったと思う。

                 

         令和5年05月21日  (症例報告 ) 山崎針療院 山崎浩一郎 「パニック障害に対する鍼灸太極治療」 

                 コロナ禍下、新型コロナウィルス感染ののち後遺症が長引き、不眠から全身の凝りを発症し

                 病院での服薬治療を行うも改善が見られず、鍼灸院を受診された方の症例であった。

                 心身の自然療病力を活性する沢田流太極治療で症状の改善が見られた。

                 健康の土台を作る太極療法で人間がもつ本来の病に対する力を発揮する。

                 西洋医学とは異なった視点から人間を診る医学として鍼灸を感じた症例であった。

                 『ツボ』を診るプロとしての我われの役割がこれからさらに重要になる時代になるのではないか

                 治療を続けていくうちに身体のみでなくこころも柔らかくなっていく 

                  柔らかいこと=健康で強いこと と老子76章でも記述されている

                

                 『102歳 一人暮らし』 石井哲代著 中国新聞社

                 から哲代ばあちゃんの心身の錆びない生き方としての語録をの紹介いただく

                今回は約3年ぶりの対面とオンラインのハイブリット月例会であったが

                やはり顔をつきあわせてのライブ感あふれる研究会の楽しさを再認識した。

​                是非会員のみなさまとまたライブでお会いしたいとおもいます。

     

          令和5年06月21日  (症例報告 ) はりきゅう和亀 佐々木将人 「若年性パーキンソン病の一症例」 

 

                 「パーキンソン病」と診断されても、症状は多岐にわたり個人差の大きな難病である。

                 診断が下ればそれに対応する薬が処方されるがこの患者さんは本人がその副作用に

                 苦しみ、薬物治療による限界を感じられていたように感じられた。

                 なぜその病にいたったか。それまでの生活の中にその原因がある場合もある。

                 一口に「健康」といってもその状態はさまざまな定義がなされると思うが、

                 「自分の能力を最大限発揮できる状態」をいうのではないかと佐々木氏はいう。

                 基本的なことはとてもシンプルである。頭ではわかっていてなかなか

                 日々の生活に追われて余裕のある時間を過ごせないこと

                 などの積み重ね徐々に心身を蝕み壊していく。そこに気づいていただく立場の私たちに 

                 治療以外にもできることがあるのかもしれない。

                 自身の深い考察も興味深く考えさせられた症例であった。

          令和5年07月19日  (症例報告 ) 敬天堂 児玉満広 「精神科通院中の症例」 

 

                 当初患者さんからは精神科に通院中とのことを伝えられないまま

                 肩背部痛が主訴で来院された。当時は1か月毎日のように治療に来られていたが

                 それからは来院されていなかった。・・・・・が5年後突然来院され・・・・

                  通常の治療をしていても想定外のことは起こる。その時落ち着いて何ができるのか?

                 何が欠けていたものはなかったか?を改めて考えさせられた貴重な報告だった

                 

                 施術者側でできる対策に加えて外側に向けての対策も必要であるとのアドバイスも

                 あった。安全安心な環境づくりも必要性を感じるものがあった。

​                 

          令和5年09月20日  (症例報告 ) 下川鍼灸院 下川貞行 「コロナワクチン接種が原因と思われる症例」 

 

                 男子中学生と老齢の男性の二症例の報告だった。

                 中学生の症例については、もう一つの副反応を言われている

                 「解離性神経症状反応」と呼ばれるこれまでの神経の病気では説明のつかない症状が

                 現われている。思春期の体調不良については、複雑な原因や思春期特有の不安定な状態も

                 あいまって、病の本質が見えづらいものがある。

                 しかし鍼灸施術によりある程度症状に改善がみられたものの、家族が回復を焦ることで

                 さまざまな治療を受け、余計に症状を複雑化してしまう。

                 会員からは親御さんの治療も必要なのではないかとの指摘もあった。

                 本人が希望して施術を受ける場合と家族のすすめで受ける場合の違いや難しさなどが検討された。

                 次の症例については筋肉注射を受けてからの、外転、外分回し時の動作時痛が残ったケース。

                 時間を空けて数回施術されているが三角筋部の夜中引っ張られるようなチリチリとした痛みが

                 残っているとのこと。

                 因果関係は明確でないものの、症状が出てくるきっかけになっていると思われる

​                 細部にわたる深みのある考察に加え、SF映画「猿の惑星」を引用されたお話も興味深かった。

 

                 令和5年10月11日  (症例報告 ) 田山鍼灸院 山田竹弘 「腰痛・鼠径部痛の症例」 

 

                 既往にヘルニアがあり、職業上正座をしないといけないため慢性的に腰痛と鼠径部痛             

                 下肢外側の痛みがあり、背中も硬く柔軟性がなかった患者がどのように変化していったか

                 その時々の施術内容をもとに検討した。

                 頸と腰のストレッチを指導し、患者が真面目に継続してくれたこともかなり効果があった。

                 鼠径部を支配している神経の神経根がL1なので、その狭脊部に刺鍼すると腰が緩む感覚を

                 患者と共有したこともよかったようだ。

                 身体を立て直すことに必要な運動やストレッチを指導してもなかなか続けていただけないことが

                 問題であるとの質問があり、そのあたりの言葉の選び方や継続してもらうための工夫も大事である

                 ことを皆で再確認した。

​                 疾患によっては必要な刺激を必要な刺激量で行う必要性も考えさせられる症例であった。

 

 

                  令和5年11月15日  (症例報告 ) 山崎針療院 山埼浩一郎 「腎虚あれこれの症例」 

 

                 突発性難聴と腰下肢痛の二症例の報告だった。

                 まさに異病同治の症例で、太極で考えるとその大本は腎にあり、同様の治療で回復に 

                 向かった。まさに東洋医学の醍醐味でもあるといえる。

                 いずれにせよ、患者のツボの反応を丁寧に切診し、その変化にすべてを任せる。

                 長年の臨床の経験から発せられる言葉は重みがあり、学ぶものにはしっかりと届いていると 

                 思う。日々の積み重ね、しっかりと患者を観察するということに徹していれば、おのずと感覚的に

                 腑に落ちることあるのではないか。

                 柔よく剛を制す。

                 硬くなった心身を施術によってゆっくりと溶けていく過程を見るのも興味深い。

 

 

                 (医療情報) 西日本新聞の記事より     山崎浩一郎

                 インフルエンザの流行時期が早まったことについての久留米大学の免疫学の教授の意見j

                 について の紹介

                 現代医学は獲得免疫のみに着目するあまり、人間に本来備わっている自然

                 免疫をあまりにも無視しつづけているのではないかという意見があった。

                 自然に寄り添う医学である鍼灸からしたらこの事態はますます動物である人間が自然から

                 肉体的にも精神的にも遠ざかっていくのではないかと懸念される。

                 (医療情報)  敬天堂               児玉満広

                 NHK ラジオ 「カルチャーラジオ」

                 「薬膳の秘訣」 漢方薬膳研究家 阪口 珠未先生

                 中医学の五臓にまつわる食べ物の取り方などわかりやすく解説してあります。

                 らじるらじるの聞き逃しでも聴くことができます。

                 おすすめです。とのことでした。

                 早速聞いてみました。精がつくと一般的に言いますがもとは。。。。。腎精がつくだったのですね。

                 なるほど。

                

                12月9日(土) 18時より

​                東洋医学氣血研究会 忘年会を開催しました。

                久留米市近郊の先生方を中心に対面で久しぶりにお互いの近況報告を含め

                日々の臨床での疑問、質問、意見等の交換ができ、有意義な時間を過ごしました。

                参加された先生方ありがとうございました。参加できなかった先生方も

                一年間ご協力ありがとうございました。

         令和5年12月13日  (症例報告 ) 田山鍼灸院 山田 文 「さまざまな不調の症例」 

 

                 不眠、頭痛、全身倦怠感などさまざまな症状を訴える患者の症例の報告であった。

                 当初はほとんど家にいて、鍼灸院まで通院することができないため、訪問鍼灸治療を

                 別の先生の依頼され、施術を受けていたが、その先生が体調不良で仕事を辞められた

                 ため、当院に受診された。家から外出することができない状態から通院できるまでに回復

                 したのはその先生の地道な施術の積み重ねの効果もあったと思う。その先生からバトンを

                 渡されて、当院でも少しづつ、体調が改善されていった症例である。 

                 家族に迷惑をかけているので少しでも早く元の状態に戻りたいとの欲求が強かったため。

                 「とにかく、焦らずゆっくり行きましょう」と声をかけ、素直に受け入れていただき、薄皮を剥がす

                 ように精気が少しづつ蘇ってきたように見受けられた。

                 自分の意志だけではままならないことが多すぎて、我慢を続けてきた結果の体調不良を自覚

                 されたおり、できることを少しだけ変化する努力をされた結果、体調にも変化をもたらすことが

                 できていると感じる。

                 大げさな言い方かもしれないが、人がその人らしくその人しかない唯一無二の輝きを隠さず

                 自然に生きれる環境をそれぞれが探し求め、変化を恐れず一日一日を大事に生きること

                 そうであれば、氣は満ち、滞りなく循環し生き生きと生きれるのではないだろうか。

                 自分が満たされていれば、他人のことなどいちいち気にならないし、比べたりすることも

                 無くなるだろう。そこに対立などは起こらないと思う。

                 いずれにせよ、このまま施術を継続し、患者の希望する状態まではゆっくりでも寄り添って

                 行きたいと思っている。

 

 

                 (医療情報) 2018 3月27日の科学誌『Scientific Reports』より         山田 文

                 人体で最大の「新しい器官」は、なぜ今になって”発見”されたのか

                 の紹介

                 

                 ニューヨーク大学などの研究チームによると、皮膚の下部、消化管や膀胱、肺、動脈の周辺

                 にある網状の組織が「衝撃緩衝材」としての機能を果たしている可能性がある。

                 間質と間質液のことになる。

                 この発見により、さまざまな臓器の機能的活動や疾病における通常とは異なる体液の動き

                 について、再考する必要が生じるかもしれない」と結論づけている。

                 この間質液は東洋医学的にいえば津液にあたり、全身に分布されていることからも

                 機能のみあって実質がないとされている「三焦」との関連が深いと思われれる。

                 そう考えるとワクワクが止まらない。

                 大変興味深い発見でこれからも情報を追っていきたいと思う。

          

            

         令和6年1月17日  (症例報告 ) 下川鍼灸院 下川 貞行 「背部から前胸部にかけての痛み」 

                 所謂肋間神経痛の痛みに対しての2症例の報告であった。

                 症例1は過去の圧迫骨折や強度の円背の状況から脊椎に起因した痛みの肋間神経痛で

                 誘因となったのが冷たいビールを飲んだことによる「寒痺」(痛痺)で

                 症例2は帯状疱疹による症候性肋間神経痛であった。

                 これは発症時期からして「着痺」(湿痺)と考えられる。

                 2例とも「痺証」に対する対策が第一と考え流れを良くすることを主眼に施術した。

                 奇経治療をメインに少ない配穴で少ない刺激を行い、結果を出している。

                 これも長年の臨床経験から得られた、引き算の治療の真髄であろうと思う。

                 知っておきたい情報が詰まったいぶし銀のようにきらりと光る素晴らしい報告であった。

                

 

                      (医療情報) 「シューベルトの手当」 チェロ奏者 クレール・オペール著

                          の紹介                                    山田 文

                 

                 アートセラピストでもあるクレール・オペールのチェロを演奏してきた経験の中で生まれた

                 本でコミュニケーションがとれない自閉症の若者や認知症の高齢者たちにチェロを聴かせ

                 続け、いろいろな変化が起きていく。

                 オペールは「この仕事はお金のためではありません。音楽に意味を与えることができます

                 多分、音楽の素晴らしさが人を変化させるのではないでしょうか。私が何かを与えている

                 よりたくさんのことを受け取っています。病人相手に演奏しますが、病気を治すことはでき

                 ません。心や感情は人類共通のものだと思います」と話している。

                 チェロの音は人間の声に一番近いと言われています。

                 言葉を超えてダイレクトに心に響く音なのでしょう。

                 直接治療を行うだけではとりこぼしてしまう隙間に入っていくような

                 効果があるんだと思います。

​                 いい音楽を聴きたくなりました。

                                    

                  令和6年2月14日  (症例報告 ) あかり鍼灸院 堀 朱里 「更年期症状(不定愁訴)の症例」 

                 さまざまな症状を呈する更年期症状の症例報告。

                 些細な出来事や環境の変化で身心に影響を受ける患者に対して根気よくその都度対応されて                            

                 症状の軽減に至った。

                 身体の変化について深刻に受け止めることなく、大らかに捉えられるようになったことで、

                 不安感も以前より軽くなっているとのこと。

                 「社会の時間軸と人間に時間軸は違うし、身体に流れる時間も個人差があるので

                 焦らず行きましょう」とお伝えしたことも大きかったのではないかと思われる。

                 

                 鍼灸師は身体のみならず精神的な部分も見据えて診断を行う。しっかりと患者に寄り添い、

                 緻密に観察を続けながら伴走しながらまたは主役である患者の伴奏者としての一面を磨いて

​                 いくことも大事だと思わされる症例であった。

                 昨今の災害の多さで気になったという質問があった

                 「もし施術中に地震が起きた場合、どう対処すべきか、また気をつけることはあるか?」

                 に対し、置鍼中だったら、お灸の施術中だったら、それぞれに経験されたことや、事前の準備

                 など気をつけることにも言及された。

                 幸運なことに、元消防局員で防災士の八代の保田秀雄先生が参加されており、災害時の行動

                 についても説明をいただけた。

                 地震の場合、すぐに外に飛び出すのはNG

                 家具など倒れないようにしておくのが大事

                 火事の場合はすぐに消火でなく、揺れがおさまってから行動すること。

                 今の調理器具やストーブなどには揺れた場合自動に消火刷る機能がある。

                 自分で消火できるか否かの基準は炎が天井まで上がったら、自力での消火は難しいとのこと

                 で身の安全を優先して避難すべき  など貴重な情報をいただきました。

                 また、水俣の児玉満広先生からご自身の体験をお話いただきました。なかなかお話しづらい内容

                 にも関わらず、お話くださり感謝します。

                 患者さんとの関わりかた、距離の取り方など人間なので、日々変化するし、対応の取り方も

                 難しい面がありますが、私たちは鍼灸師にできることを淡々を誠実にやっていくことしか出来ないの

                 かも知れません。それぞれの立場でできることを。

                                 

​                 

                  令和6年3月27日  (症例報告 ) 安徳鍼灸院  安徳 信二 「石と保冷剤と赤外線を用いた治療」 

                                                 (頭痛、肩関節痛、腰椎側弯)

                 朝起床後30分だけ右の親指、示指、中指のしびれの症状に対し、第2頸椎から第3胸椎付近

                 まで少しずつずらしながら、棘突起が左右に歪んでいないかを診察することで、ゆがみのある

                 部分に対して、施術を行うことで症状がなくなった。

                 五十肩を疑う肩関節痛の場合も同様の診察をし、頸椎のゆがみを治すことで肩関節痛が消失

                 する場合がある。

、                腰椎の側弯については、第10胸椎から第5腰椎まで左右から指先で挟んで診察をし、出っ張り

                 の強い部分に施術を行った。

                 鍼を使用せずに石と保冷剤と赤外線を用いて、さまざまな試行錯誤を経て生まれた独自の治療を

                 確立して効果を出している症例である。

                 直接自分の治療に用いることは難しい点もあるかもしれないが、頭の引き出しに残しておくべき

                 貴重な症例であるし、鍼がない場合に既存の道具にこだわらずに、治療の可能性を見出すことを

                 気づかせてくれる報告であった。                            

                 

               次回は4月18日(木) 20時スタート

          オンライン月例会になります。

        

         

​          症例報告は佐々木将人の担当です。

              ご興味のある方は事前に事務局へ連絡ください。

    

                 

     

​       

     

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